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【政治・経済】お金の話 銀行のはじまり 「ゴールドスミスの気づき」

Category:政治・経済
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ゴールドスミス


*注意:話をわかりやすくするため、あえて固有名詞に改変、事象の抽象をして説明しております。

むかしむかしあるところ、中世のイングランドにゴールド・スミスさんという大商人がおりました。
スミスさんは日々、大きなお金を扱い、一見幸せに見える生活を送っていましたが、
実は日々、頭を悩ませておりました。

この頃のお金といえば、金貨や宝石、金の延べ棒といった、見ただけで価値あるものとわかる
とても豪華な貴金属で取引きされておりました。
わかりやすくうっとりするほどの金貨や宝石ですが、これには同時に欠点がありました。
そうです、重いのです。
持ち歩くには手も腰もすぐ痛くなってしまうほどに重いのです。

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お金はたくさんあるに越したことはない。
だがこれでは、腰が痛くてたまらない。

困ったスミスさんは、考えに考えここで1つ妙案を思いつきました。
そうだ、重くなければいいんだ、なんなら紙でいい。

金細工商のスミスさんは、大きな金庫を持っていました。
この大きな金庫に全部の金貨や宝石を詰め、鍵をかけてしまいました。
そして代わりに「100ゴールド」と紙に書き、サインを書いてこの1枚を
「金貨100枚分」と定めたのです。

仲間うちの大商人にこのことを告げ、君たちのお金も預かってあげるよと持ちかけると
仲間の商人はおおいに喜び、次々とスミスさんの元へ金貨を預けに来ました。
金貨を預かったスミスさんは彼らに預かり証(金匠手形)を渡しました。
これさえ持ってくれば、いつでもその紙に書いてある通りの額を引き出せるからねと約束して。


ある日、スミスさんは、今や金庫にいっぱいになっている金貨や宝石の山を
ぼんやり見つめながらあることに気づきます。
「そう言えば、金貨を預けにきた連中、もう1年近くも取りに来ていないな‥」

正確には少額程度を引き出しに来る者はたびたびいました。
ですがまとまった額を一度に引き出しに来た人は、預かり屋を始めてからまだ一度も来ていません。

そうです、皆持ち歩くのが嫌だから預けに来るのです。できるだけ、持ち歩きたくないのです。
ただ重いだけでなく、まだ治安も悪い時代、いつ盗賊に襲われるかも知れません。
ですが最初から金貨一杯の袋を持ち歩いていなければ、目立つこともなく襲われる危険はグッと減ります。
皆、無理してでも預けた金貨を出したくない、預けっぱなしにしておきたいのです。
そこに気づいたスミスさんは、早速この気づきを活かした商売を始めました。

「お金貸します」

看板にデカデカと表記し、お金に困った農民や市民を相手にスミスさんは金貸しを始めました。
金庫の中にうなっている預かった金貨をお金に困っている人たちに貸し出し、その金利を稼ぐ商売を始めたのです。
何せ預けにくる商人たちが一斉に手形を持ち込んで金貨に戻してくれと言ってくる心配が、まずないのです。
スミスさんは、大胆にどんどん貸し出し大儲けしました。

そうするうちに、スミスさんの発行する金匠手形はどんどん市場に流通を拡大していきました。
小麦を買うにも、魚を買うにも、皆もう重くて不便な金貨は使いません。
スミスの金匠手形を出して「これでいいだろう、金貨にはいつでも変えられる」で
商売が成立してしまうのです。

そんな市場の様子を見ていたスミスさんは、「まてよ…」と頭にひらめくものを感じました。
いや、でもそんなバカな‥しかし…

その気づきを実践すべく、スミスさんはあるものを持って近くの食堂に行きました。
食堂は賑わい、見知った商人仲間の顔もあり皆がおおいに食事を楽しんでおりました。
声をかけられましたがスミスさんは彼らに混じらず、手早く食事を平らげるとお会計を頼みました。

スミスさんは早まる鼓動を抑えながら、懐から震える手で紙切れを1枚取り出しました。
それは自分が先ほど、発行したばかりの架空の預かり証(金匠手形)でした。
誰からも預かっていない、いわばただの紙切れです。
「こ、これでいいかね?」手形を確認した店のマスターはにっこりとして「ええ勿論!」と
頭を下げてまたのお越しをと、うやうやしく頭を下げて見送ってくれました。


店から出たスミスさんは頭をハンマーで殴られたような衝撃を感じていました。
自分がただ書いただけの紙切れが、お金になった!!

ゴールド・スミスさんはここで、ついに気づきました。
お金の正体、経済の実態というものに。


お金は実体のある金貨や宝石である必要はなく、ゼロからでも「概念」と「保証」さえあれば
それはれっきとしたお金であり、流通も成立もしてしまうということに。


ここで置き換えて考えてみてください。


ゴールド・スミス=銀行
商人・市民たち=国民
金匠手形=現在の日本国貨幣

さらにここで財布から1万円札を出して「壱万円」の上の文字を確認してみてください。
『日本銀行券』と書かれているはずです。
そうです。一万円札は実は一万円ではないのです。
正確には「これを一万円の価値があるものと国や市場が認めたただの紙切れ、
日本銀行版“金匠手形”」、これが正体です。

銀行預金の担保は「貸付金」、銀行は与信(借り手が返済できるという見込み)が許す限り、
論理的には“無限”にお金を発行できます。

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経済界に衝撃を与えたゴールド・スミスの「金匠手形貸し出し」は、
現在の『銀行』のはじまりとなりました。
めでたしめでたし。


今回紹介したお話は、今後説明してゆく、日本経済の根幹や日銀と政府との話に
密接に関係してくることなのでぜひ覚えておいてください。 ( ´・ω・)y─┛~~~oΟ◯